馬鹿ブス貧乏な私たちが、世界に必要とされなくなっても生きていくための処世術【佐々木ののか】
■ 未来予測・対策本は、最悪の未来図を提示してくれるほうがいい
全15章で構成されている本書は、新型コロナウイルスの影響で生じた変化と、それに伴って私たちの生活がどう変わるか。そして、そんな近未来を迎え撃つために取るべき行動や読むべき本が具体的に記されている。
たとえば、第4章では各国で「大盤振る舞い」された財政負担のカラクリを紐解きつつ、経済システムの限界、その末端にいる私たち庶民が置かれている状況を説明してくれる。第9章ではコロナ危機に伴って減少した対面型接触型サービス業の担い手の多くは女性であることを指摘するものの、第12章では「消える仕事」ではなく「今ない仕事」を想像する楽しさに触れ、めまぐるしい変化の荒波を楽しむような見通しを見せてくれる。
そして、第15章では、厳しい近未来を生き抜くための方法が具体的に説明されている。「ICTスキル学習」や「困窮したら公的支援について調べ利用する」といった“食うため”の処世術から、「信頼できる人を気長に見定め確保する」といったソフト面のアドバイスまで幅広い。
生きていくうえで本当に必要な知識は学校で教われず、かといって誰も教えてくれないので、無駄に困窮したり損をしたりする。逆に言えば、私たちは「無知」なだけであって「無力」な人間ではないということを、著者・藤森さんは知識とともに教えてくれる。押し付けではなく、一人ひとりが考えて自立する余地を残してくれている。
ほかにも、「コロナをめぐる権力者共謀論を漁る」(第2章)や、「アフターコロナは監視管理社会になるらしい」(第3章)のように、人によっては不安になったり、「眉唾ではないか」と目を三角にしたりするかもしれない話も盛り込まれている。
しかし、これらも藤森さんのやさしさだ。第11章「近未来は最悪を予想しておくぐらいが丁度いい」の最後で、彼女はこう書いている。
いずれにしても、未来予測・対策本は、最悪の未来図を提示してくれるほうがいい。見通しの甘さは命取りだ。いろいろ想定しておくだけでも、ショックは小さく、仕切り直しがしやすくなる。いろいろ想定外だと、そのショックだけで麻痺してしまう。
私はこの考え方に、深く同感した。